【読書メモ】独習 論理構造

 AならばBであり、かつBならばCであるならば、AならばCである。このように演繹的に推論は論理と呼ばれ、公理から出発して、いくつもの命題を導き出すことが出来る。この論理を形式的にとらえた学問が形式論理学であり、本書は論理学の入門書となる。

論理学の歴史は古く、プラトンアリストテレスの時代には論理学の基礎が出来つつあったそうだ。

独習コンピュータ科学基礎II 論理構造

独習コンピュータ科学基礎II 論理構造

 

命題論理から自動推論まで

本書は、命題論理で自然演繹法を学び、一階述語論理の形式的証明をまず学ぶ。しかしながら、高階述語論理や、ゲーデル不完全性定理などは触れてはいるものの、詳細には述べられていないので、これらが必要な人にとっては別の書籍が必要だろう。

さらに、形式的証明を学んだ後に、自動推論手法について学ぶ。自動推論とは、いわゆるProlog的な推論手法のことであり、命題を入力して、それが正しいかを論理的に検査することが出来るようになる方法である。たとえば、AはBの親であり、BはCの親である、としたとき、AはCの祖先であるか?という問いにコンピュータが答えてくれる。本書を習得すれば、Prologのエンジン部分は実装できるようになると思われる。

演繹的手法と発見的手法

論理をもとにした手法は、演繹的推論と呼ばれる。この演繹的手法は、人工知能の一分野とされており、第5世代コンピュータ時代の1980年代に活発に研究開発されたようである。

一方、現在の人工知能といえば、深層学習などの発見的推論が主流となっている。発見的手法は、推論するために必要な条件がすべて揃っていなくても、ある程度の精度で推論してくれるという利点がある。しかし、論理的に誤りであっても、推論してしまうという問題点もある。

人間が物事を推論する時、発見的手法と、演繹的手法、どちらもバランスよく利用しているため、現在の深層学習一辺倒の人工知能ではうまくいかないだろう。現在、発見的手法と演繹的手法を組み合わせた研究も行われているようなので、そちらに期待である。

演習問題と解答があり便利

本書は、章の終わりに演習問題があり、独学に向いている。演習問題の解答は、ウェブ上で取得できるので、解けない問題があったら、ちらっと答えを見てから解答を考えるということも出来る。論理学は一歩一歩積んでいけば、誰でも理解できるので、焦らずに頭から地道に問題を解いていくのが良いだろう。

誤字脱字が多い

残念ながら、本書は誤字脱字が多い。一応、本書のウェブ上にも正誤表はあるのだが、全く網羅はされていないようだった。