【読書メモ】操られる民主主義 デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

どくさいスイッチ

ドラえもんの秘密道具の一つにどくさいスイッチという道具があるが、このスイッチを使うとどんな命令でも叶えることができる。では、もしも現実にどくさいスイッチのようなものがあったとして、そのボタンを押すことが出来たとしたら、我々はどうするだろうか。例えば、そのスイッチを押すと、好きの人の心を自在に操ることが出来たり、大金持ちになれたりするとしたら、どうだろうか。操られる民主主義という本では、このどくさいスイッチは実在していたと思わされるような内容が書かれていたので、適当に思ったことを書きなぐりたい。

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

操られる民主主義: デジタル・テクノロジーはいかにして社会を破壊するか

 

ケンブリッジ・アナリティカ

つい最近、ケンブリッジ・アナリティカというコンサル会社が米国での2016年トランプ大統領選に一枚噛んでいたということで大きな問題になった。同社はそれ以外にも、イギリスのEU離脱Brexit)にも大きく関わっているということが明らかなり、こちらも大変物議を醸し出している。

2016年のトランプ大統領選やBrexitで彼らがとった手法は、Facebookなどの個人情報を取得してデータマイニングを行い、トランプに投票しそうな人、あるいはEU離脱に参加しそうな人をアルゴリズムによって見つけだし、そういった人々らにターゲット広告を行うことで投票行動を変えてくというものである。例えば、車のフォードの所有者はトランプ支持に回る可能性が高いとアルゴリズムが導き出したため、フォード所有者に右寄りなターゲット広告を見せることでトランプ支持者に変えていったのだ。この手法の成果はめざましく、ヒラリー・クリントンの所属する民主党が絶対と言われていたペンシルバニア州ではなんとトランプが勝利した。

このような仕組みが明らかになってくると、疑問に思うことが出てくる。私達が使っているSNSでの投稿や閲覧は、自分たちが思っている以上に、私達の意思をコントロールするために使われているのではないだろうか。

21世紀のプロパガンダ

一般的な道徳観念や倫理観などに照らしあわせると、人間の自由意志を奪うような行為は良くないと考えられる。それに、民主主義とはそもそも、私達には自由意志があり自分自身で行為を決定できるという前提があるからこそ成り立つのであって、誰かからコントロールされるようでは、到底民主主義と言えないのではないだろうか。

ケンブリッジ・アナリティカのようなアルゴリズムによる方法ではなくて、誰かに扇動されるような民主主義はこれまで幾度も行われてきた。従来まではそれらはプロパガンダと言われたが、これが今世紀になりかなり巧妙になりつつある。しかも、この流れは止まるどころか、今後加速していきそうな気配しかない。ケンブリッジ・アナリティカの件は今回運悪く発覚してしまったが、今後はより巧妙に事がなされるだろうとは容易に想像される。

私達ひとりひとりは極めて道徳的で倫理的な人間であったとしても、実はどこかにどくさいスイッチを持っている少数の人々がいて、私達をコントロールしているとしたら、私達はどうすべきだろうか。

プライバシー

プライバシーというと、自分の秘密の情報を知られるのはなんとなく気持ち悪いから必要だと思われがちであり、特に企業のような組織からみると、個人のプライバシーなど大して重要なことではないと考えているフシがある。しかし、実はプライバシー情報とは、大量に集めることで誰かをコントロールすることができるようになるという、どくさいスイッチそのものだったのだ。

プライバシー保護するための技術も色々と提案はされている。例えば、暗号技術の秘匿計算などはその最たる例だろう。ただこれらはパフォーマンスなどの面で技術的な課題がいくつかある上に、そもそもGAFAのような国際的企業に対する強制力もないので、これだけで解決するようなものでは到底無いように思われる。

したがって、結局のところ我々市民のリテラシー向上が必要で、今後社会をどのようにしていきたいかを、私達自身で良く考える必要があるのだろう。ほいほいSNSのアンケートに答えると、それをザッカーバーグが集計してターゲット広告のエサにしてしまうのである。

これは受け売りだが、情報はオイルではなく原子力と言ったほうが良く、適切な知識を持って正しく扱わないと、私達の社会を容易に破壊するのだろう。