2019年総括

2019年はずっと講義と演習の準備を行っていたように思う。それでも、合間に1、2ヶ月程度は時間があったため言語処理系の実装もすすめていたが、やはりそれほど進まなかった。講義準備以外にも雑用がジャカジャカふってくるため、きついもんがある。さらに、正直、有意義とは言えないような出張も多くあるためになかなか厳しい。しかし、これはもうしょうがないだろう。

2019年の研究成果

2019年の研究成果だが、結果的に、ジャーナル1本、国際会議論文1本、国内研究会4本となった。

ジャーナル
  • Yuuki Takano, Ryosuke Miura, Shingo Yasuda, Kunio Akashi, and Tomoya Inoue, "Design and Implementation of a Scalable and Flexible Traffic Analysis Platform", 日本ソフトウェア科学会学会誌『コンピュータソフトウェア』, Vol.36, No.3 (2019), pp.85-103, 2019/8
国際会議
  • Nobuyuki Kanaya, Yu Tsuda, Yuuki Takano, Daisuke Inoue, "Byakko: Automatic Whitelist Generation based on Occurrence Distribution of Features of Network Traffic", IEEE Workshop CyberHunt 2019, 2019/12
国内研究会
  • 宮地 充子、高野 祐輝、河内 亮周、中正 和久、"プライバシーを保護した多機関データ突合システムについて", 第39回医療情報学連合大会、2019年11月
  • 金谷 延幸、津田 侑、高野 祐輝、井上 大介、"サイバー攻撃観測における対象ネットワーク特化型ホワイトリスト作成手法の提案"、情報処理学会 コンピュータセキュリティシンポジウム 2019 (CSS 2019) 論文集、2019年10月
  • 竹中 幹、高野 祐輝、宮地 充子、"Deceptionネットワークを構成するフレームワークの提案"、Computer Security Group (CSEC2019-03), IPSJ SIG Tech. Rep, Vol. 2019-DPS-178(5),1-7, 2019年2月
  • 金谷 延幸、津田 侑、高野 祐輝、井上 大介、"サイバー攻撃観測のモデル化とデータ生成・変換手法"、暗号と情報セキュリティシンポジウム 2019 (SCIS 2019)、2019年1月

ジャーナル論文は、2015年にUSENIX LISA 2015で発表した内容の発展版で、論文の内容的には2017年にはほぼ出来ていたのだが、なかなか時間がかかってしまったと思う。ジャーナルは良いとして、今年一番の成果は、国際会議論文のByakkoだろう。ようやく英語の査読付き論文として投稿できたため感慨深いものがある。

学生と一緒にやっていた論文はまだ1本しかないが、今月はSCIS 2020へ2本投稿することができたため、これから徐々に増えていくだろうと思う。SCIS 2020へ投稿した論文は以下の通り。

  • 西口 朋哉、高野 祐輝、宮地 充子、"セッション型を用いたアクセスコントロール機構の設計と実装"、SCIS 2020
  • 竹中 幹、高野 祐輝、宮地 充子、"XDPを用いたネットワーク型欺瞞的防御システムの設計と実装"、SCIS 2020

まだまだPreliminary Studyな感じはあるが、ようやく足元が固まりつつあるため、今後クオリティを上げて国際会議論文やジャーナル論文にしていきたいところである。

2019年の講義

2019年は、離散数学と計算の理論、実践情報セキュリティとアルゴリズム、の講義を2つと、高度サイバーセキュリティPBLのIとIIを行った。分野的には、数理論理学、λ計算、型システム、形式手法、ネットワークセキュリティ、ファイアウォール、デバッガ・動的解析、正規表現アセンブリ・コード生成という感じで、分野が広すぎてなかなか大変だった。自分の専門である、コンピュータネットワーク、分散システム、コンパイラあたりならもう少し余裕を持ってできると思うのだが、なかなかそうは行かないもんである。

来年はさらに上に加えて、線形型システムとリージョンベースのメモリ管理手法を行い、Rust言語を支える技術について講義を行おうと思う。自分に出来るかは心配であるが、既存のコードを、RustやHaskellといった安全なプログラミング言語に置き換えていくのはソフトウェア業界の課題であるため、なんとかやり遂げたい。

2020年の抱負

2020年は、研究予算をとり、将来的には幅広な合宿に学生を連れていけるようになると良いと思っている。他大学の優秀な学生と交流できる機会があるのは、それなりに意義のあるものだと思うので。

また、本も書きたいし、言語処理系実装もすすめたいし、論文も書きたいし、とやりたいことが多すぎるが、これらは時間を見つけて少しずつすすめるしかない。もう少し時間があれば研究成果も増やせると思うのだが、悩ましいところである。

鬼が笑うので、抱負はこの辺にしておこう。それでは皆さん良いお年を。