【読書メモ】サイエンス・インポッシブル SF世界は実現可能か
ミッション・インポッシブルというとスパイ映画を代表する映画であり、トム・クルーズ演じる特殊工作員の主人公が、不可能と思える任務(ミッション)を遂行していく映画である。おそらく、そのミッション・インポッシブルにインスパイアされたサイエンス・インポッシブルというタイトルの本が大変面白かったので紹介したい。
- 作者: ミチオカク,Michio Kaku,斉藤隆央
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2008/10/25
- メディア: 単行本
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本書は、SF作品ではおなじみとなった技術が、実際問題どの程度実現可能かを、最先端科学の視点から述べたものである。たとえば、スタ・ウォーズ、スター・トレック、超時空要塞マクロスなどでは、超光速航行、つまりワープが多用されているが、このワープを実現するためにはどう言った可能性が得られるかなどが議論されている。
ワープ技術の実現方法は、いまのところ具体的に2種類あると考えられている。1つめはワームホールを利用したものであり、2つ目は負のエネルギーを利用したものである。ワームホールを利用したものは聞いたことはあったが、負のエネルギーを利用する技術は本書で初めて知った。負のエネルギーを利用する方法は、アルクビエレ・ドライブと呼ばれており、負のエネルギーを持つ物質であるエキゾチック物質を用いて空間を圧縮し、その圧縮された空間を宇宙船が航行するという寸法だ。
この負のエネルギーは荒唐無稽なものと思われるが、実のところ、1958年に既に実験室レベルでは観測されているらしい。これは1948年にオランダの科学者カシミールが予言したエネルギーのため、カシミール効果と呼ばれている。問題は、カシミール効果で得られるエネルギーは極めて微小なものであるということだ。
なお、空間を圧縮させて航行するためには、エキゾチック物質を用いて、ビッグバンとビッグクランチを発生させなければならず、これには尋常でないエネルギーが必要だ。そのため、超光速航法を実現するためには銀河レベルのエネルギーをコントロール出来るような科学技術を持つ文明でなければならない。
本書では、このように様々なSF技術について科学的根拠を示しつつ解説を行っている。超光速航法以外には、不可視化、テレポーテーション、タイムトラベルなどが解説されており、これ一冊で良質なSF作品をいくつも視聴した感覚を覚える、大変オススメの書籍である。